歯がじわじわ浮く感じがするのは歯根膜炎のサイン?原因と受診の目安を解説
2026/09/10
こんにちは。 秋葉原の歯医者、スマイルデザインデンタルクリニック秋葉原です。
「特定の歯が浮いている感じがする」
「噛むとふわっとした違和感がある」
「歯が少し高くなったような気がする」
このような「歯が浮く感覚」は、痛みがなかったり、すぐに症状が消えたりすることもあるため「疲れのせいかな」と考えてしまいがちですが、その背景には進行した虫歯や歯周病などが潜んでいるケースも少なくありません。
今回は、歯が浮く感覚が生じる原因や治療法などを解説します。
歯根膜(しこんまく)とは?歯が浮くメカニズム
歯が浮く原因を知るためには、まずは歯の周囲の構造を理解する必要があります。
歯は顎の骨に直接くっついているわけではなく、歯根膜を介して歯槽骨に支えられています。
歯根膜とは、歯の根(歯根)と顎の骨(歯槽骨)の間にある、厚さ0.2~0.3ミリメートルほどの線維性結合組織です。
歯と骨を緩やかにつなぎながら、物を噛んだときに生じる強い圧力(咬合力)を吸収・分散させる役割を担っています。
また、歯根膜には神経線維と毛細血管が網の目のように分布しています。
これにより、圧力や硬さ、異物の存在などを鋭敏に感知し、噛む力の調節や食感の認識を可能にしています。
なぜ「歯が浮く」と感じるのか
歯根膜に神経や血管が豊富にあることが、独特の「浮く感じ」を引き起こす大きな要因です。
口内で細菌感染が起きたり、歯に過度な力が加わったりすると、歯根膜に炎症が生じます。
すると、張り巡らされた毛細血管が拡張し、組織液が溜まって歯根膜全体が腫れ上がります。
しかし、歯根膜があるのは顎の骨と歯の根に挟まれた、狭い隙間です。
ここで組織が腫れると、歯が骨の中から外へとわずかに押し上げられた状態になります。
その結果、上下の歯を噛み合わせたときに炎症を起こしている歯だけが周囲より先に当たり、神経を通じて「歯が浮いた感じ」が脳に伝わります。
歯根膜炎の主な原因と治療・予防法
歯が浮く感覚を引き起こす「歯根膜炎」は、歯根膜に炎症が生じた状態です。
炎症が起こる原因としては、大きく分けて細菌が関与する「感染性」のものと、物理的な力が加わる「非感染性」のものがあります。
原因1:過剰な咬合力と歯ぎしり・食いしばり(咬合性歯根膜炎)
歯が浮く原因として、特に頻繁に見られるのが、歯に加わる物理的な負荷です。
歯ぎしりや食いしばりによって、強い力が特定の歯に持続的にかかると、歯根膜が圧迫されて内出血やうっ血を起こします。これを「咬合性歯根膜炎」と呼びます。
特に就寝中の歯ぎしりは、ご自身の体重以上の負荷がかかっているとされ、本人が気づかないうちに歯と歯根膜にダメージを与え続けています。
「朝、目が覚めたときに特定の歯が浮いている感じがする」「顎がだるい」という場合は、夜間の歯ぎしりや食いしばりが原因である可能性が考えられます。
歯科医院での治療法
咬合性歯根膜炎は、原因となっている過剰な力を逃がしてあげることで、歯根膜の炎症を抑えます。
ナイトガード(マウスピース)の製作
歯科医院で、就寝時に装着するマウスピースを製作します。
これにより、歯同士が直接強く噛み合わさるのを防ぎ、歯根膜にかかる負担を分散・軽減させます。
咬合調整(噛み合わせの微調整)
特定の歯だけが強く当たっている箇所がある場合、歯の表面を少し削り、全体の噛み合わせのバランスを均等に整えます。
原因2:虫歯の進行と歯髄への感染(根尖性歯根膜炎)
虫歯の放置によって細菌が歯の内部深くまで侵入した場合も、歯の浮く感じや痛みを引き起こします。
虫歯がエナメル質と象牙質を突き破って、神経が入っている「歯髄(しずい)」という部位まで達すると、強い歯痛(歯髄炎)が起こります。これをさらに放置すると、やがて歯髄壊死が起こります。
歯髄壊死が起こると一時的に痛みが消えますが、根管内の細菌はさらに増殖を続け、やがて根の先端から歯周組織へ感染が広がります。
この、根の先にある歯周組織に炎症が及んだ状態を「根尖性歯周炎」と呼びます。この段階になると、噛んだときの痛みや、歯が浮いたような強い違和感が前面に出てくるようになります。
歯科医院での治療法
虫歯に由来する歯根膜炎は、根管の内部をきれいに掃除する「根管治療」が必要です。
根管治療
歯冠に穴を開け、細菌に汚染された神経の組織を、専用の器具を使って丁寧に取り除きます。
その後、内部を殺菌・消毒し、再び細菌が入り込まないように充填材で隙間なく根管を塞ぎます。
放っておくことのリスク
虫歯由来の歯根膜炎を放置すると、根の先に「歯根のう胞」と呼ばれる膿の袋が形成されたり、骨を溶かす「根尖性歯周炎」へと悪化したりします。
さらに進行すると、歯ぐきにフィステル(瘻孔)ができて膿が溢れ出てきたり、顎の骨の全体に炎症が広がる「顎骨骨髄炎」を引き起こします。
原因3:過去の根管治療の再発(再感染による歯根膜炎)
「すでに神経を取っている歯なのに、なぜか浮く感じがする」というケースもあります。
過去に根管治療を終えている歯であっても、時間の経過とともに再発することがあります。
原因としては、当時の治療で取りきれなかった微量な細菌が時間の経過とともに根の先で増殖した場合や、かぶせ物の隙間から新しく細菌が侵入した場合、根管充填材が根の先から少し押し出されて歯根膜を物理的に刺激している場合などが挙げられます。
神経を失った歯は、細菌に対する抵抗力が弱くなっており、再感染を起こしやすい傾向にあります。
歯科医院での治療法
かぶせ物や土台を一度取り外し、再度根の治療を行う必要があります。
感染根管再治療
古いかぶせ物や、歯の土台(コア)を除去し、中に詰まっていた古い充填材を専用の薬剤や器具で取り除きます。
その後、洗浄・消毒を複数回行い、無菌状態にしてから再充填を行います。
根尖切除術(歯根端切除術)
根の構造が複雑で器具が奥まで届かない場合は、歯ぐきを少し切開して、病巣と一緒に歯根の先端を数ミリメートル切除する外科的な手術を行うこともあります。
原因4:歯周病の進行と歯槽骨の吸収
歯周病(歯槽膿漏)によって歯を支える土台が弱くなると、歯根膜に過剰な負担がかかり、浮く感覚が慢性化することがあります。
歯周病は、歯垢(プラーク)の中にいる歯周病菌が歯ぐきに炎症を起こし、歯を支えている顎の骨(歯槽骨)を溶かしていく病気です。
土台が少なくなった歯は、普通の強さで食べ物を噛んだだけでも、残されたわずかな歯根膜に対して大きな負荷がかかるようになります。そのため、食事のたびに浮くような違和感が生じます。
歯科医院での治療法
歯周病が原因の場合は、プラークや歯石といった細菌の塊を除去して、歯ぐきの炎症を鎮めることが優先されます。
スケーリング&ルートプレーニング(SRP)
歯の表面や歯周ポケットの奥深くに強固にこびりついた歯石を、専用の超音波スケーラーや手用の器具を用いて削り落とします。
歯周外科手術・ 歯周組織再生療法
ポケットが深く奥まで器具が届かない場合、歯ぐきを一時的に開いて歯石を取り除く手術や、溶けてしまった骨の再生を促す薬剤を用いた再生療法を検討します。
日常での予防法
歯周病によるトラブルを防ぐために大切なのは、毎日の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスです。
デンタルフロスや歯間ブラシを併用し、歯と歯の間の汚れまでしっかり落とすことが大切です。
原因5:身体の疲労・免疫機能の低下
「疲れるといつも全体的に歯が浮くような感じがする」という場合、体調の変化が引き金になっている可能性があります。
普段は、免疫細胞が口腔内の常在菌(細菌)の活動を抑え込んでいます。
しかし、体力が落ちて免疫機能が弱まると、細菌の活動が一時的に優位になり、歯周ポケット内や過去に治療した根の先などにわずかな炎症(うっ血)が起きやすくなります。
対処法と受診の目安
多くの場合は、十分な睡眠をとり、栄養のある食事をして体力が回復すれば、体調の改善とともに自然と症状も消失していきます。
ただし、「十分休んだはずなのに症状が続く」「体調が戻っても特定の歯だけがずっと浮いている」という場合は、免疫低下をきっかけに、中に隠れていた虫歯や歯周病の病巣が本格的に活動を始めた可能性があります。
原因6:事故や衝突による外傷(外傷性歯根膜炎)
転倒して顔をぶつけたり、ボールが口元に当たったりした後に、歯が浮く感覚が生じることがあります。
歯に直接的な強い衝撃が加わると、歯根膜の微細な血管が断裂し、内部で出血や打撲(炎症)が起こります。これを「外傷性歯根膜炎」と呼びます。
衝撃の度合いによっては歯がグラグラ揺れる、位置がズレる、抜け落ちるといった一目でわかる損傷が出ますが、軽度の場合は見た目に全く変化がなく、ただ「触ると響く」「じわじわと浮いて噛めない」という症状だけが残ることがあります。
歯科医院での治療法
まずはレントゲン撮影などで歯の根っこが骨の中で折れていないか、顎の骨に異常がないかを確認します。
消炎鎮痛と安静(固定処置)
根に破折がない場合は、隣の健康な歯と歯科用プラスチック(レジン)や細いワイヤーを使って固定し、歯根膜が修復されるのを待ちます。
経過観察と歯髄の確認
外傷を受けた歯は、数か月から半年ほど経ってから、神経が徐々に死んでいってしまう(歯髄壊死)ことがあります。そのため、治療直後だけでなく、定期的に経過を確認していく必要があります。
原因7:矯正治療
歯並びの矯正治療を始められたばかりの方や、装置を調整した直後にも、歯が浮くような独特の感覚が生じます。
矯正治療によってワイヤーを新しく交換したり、マウスピースを次のステージに進めたりした直後は、歯根膜が一時的に強い圧迫を受けるため、歯が浮くような感じや、物を噛んだときに締め付けられるような痛みを感じます。
経過と対応
矯正治療による浮く感じや痛みは、装置の調整を終えてから2~4日程度をピークに自然に消失していきます。
その間は無理に硬いものを噛まず、おかゆやうどんなどの柔らかい食事を摂るようにしてください。
もし1週間以上経っても激しい痛みが続いたり、食事が摂れないほど痛む場合は、歯科医院に連絡し、力の強さを少し緩めてもらうなどの調整をしてもらいましょう。
歯科医院を受診するべき目安
歯が浮く感じがしても「少し様子を見ても大丈夫だろう」と思ってしまうことも多いかと思います。
病態の進行を防ぐための受診の目安を解説します。
当日~翌日に受診すべき状況(緊急度:高)
何もしなくてもズキズキと激しく痛む(自発痛がある)
歯ぐきが明らかに腫れている、触るとぶよぶよする
歯ぐきの隙間から膿(うみ)が出てきて、強い口臭がする
頬や顎、目の下あたりまで顔が大きく腫れ上がっている
歯の浮き感と同時に、37.5度以上の発熱や寒気がする
指で触ると、その歯が前後左右や上下にグラグラと大きく動く
数日以内に受診すべき状況(緊急度:中)
体調は悪くないのに、特定の歯だけが1週間以上ずっと浮いた感じがする
食事のとき、その歯で噛むと毎回決まって違和感や軽い鈍痛がある
浮くような不快な感覚が、日に日に強くなってきている気がする
過去に神経を取ったはずの歯の根元あたりが、重く痛む
まとめ
歯が浮くような独特のじわじわとした感覚は、「歯根膜」に炎症が起き、歯が下から押し上げられているサインです。
その原因は、ストレスや体調不良による一時的なものから、無意識の歯ぎしりによる負荷、虫歯の進行や重度歯周病、過去のトラブルの再発まで多岐にわたります。
大切な天然歯を失ってしまう前に、ぜひ一度、お近くの歯科医院を受診し、レントゲンや噛み合わせのチェックを受けるようにしましょう。
記事監修:スマイルデザインデンタルクリニック秋葉原 院長 歯科医師 児嶋 剛
日本インプラント学会 所属
日本歯内療法学会 所属
日本審美歯科学会 所属
日本臨床歯科学会 東京SJCD 会員
スマイルデザインデンタルクリニック秋葉原 :https://smile-design-dc.com/
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